DS『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』 金子一馬と石田栄司へのインタビュー

 プロデューサー、オリジナルコンセプト、キャラクター・悪魔デザインを担当する金子一馬と、ディレクター石田栄司へのインタビュー。公式サイトのコンテンツのひとつ。
 以下、第2回「クリエイターのこだわりを解析せよ」から注目の発言を引用。

石田:扱うべき情報量が増えれば増えるほどゲームの難易度って高くなっちゃうんですよね。実際人間って忘れちゃうし…。
ですがDSって2画面あるので、覚えなきゃいけなかったりすることを下画面に常に出しておけるんですね。これって最強のメリットなんですよね。
例えば、バトル中で言えば戦いで得た敵の情報を常に出しておけるとか。マップで言うとオートマップを常に表示しておけるとか。
(中略)
逆に、出るものは全部画面に出ているので、いい意味で手心を加えずに難しくしてやるぞって感じもあって、結構難しいんだけど不条理感がない絶妙な感じになっているかなと思います。

 既知情報を参照しなおす手間が省けるのはありがたい。ゲームに限らず、一手間あるとないとではユーザの印象はかなり違う。情報が与えられすぎると手応えが失われる心配が生じるが、今作は段階を追って敵の詳細が判るようになっているので安心。

石田:やっぱり人間って切り替えれば出るじゃんとか言っても切り替えてくれないんですよ。でも下に出ているものは見てくれるので、「あっそうか、こいつはこれが弱点なんだ、じゃあオレが悪かったんだ」とか、そういう風になってくれるんですね。
ユーザーが難しいことに納得してもらえる感じっていうのも、2画面あることでかなり恩恵にあずかれてるなとは思いますね。
(中略)
やっぱりマップが出てないと同じ落とし穴に何度も落ちるんですよ。それって人の記憶力の問題なんですけど、やっぱりゲームのせいになっちゃう。そういうところは2画面出ていると納得性が高いんで、凄いメリットだったなと思います。

 『納得』は全てに優先するぜッ!! でないとオレは『前』へ進めねえッ!
 失敗をゲームのせいと思わせない工夫、積極的にリトライさせる工夫は大切。


 不思議のダンジョンは失敗を積み重ねるゲーム。大抵は判断の間違いが原因だが、理不尽な死に見舞われることもある。複数要因による偶然の産物なら「珍しいものが見られたから良し」と話のネタ(いわゆる死に様自慢)にして治まるものの、ありがちな理不尽パターンが仕込まれているシリーズはあまり好きになれない(部屋に入った直後に閉じ込めの壺を投げつけらる、とか)。
 良いバランス(あくまで個々のユーザが感じる尺度)のローグライクのリトライ欲求は非常に高い。ゲームにおける「学習の快感」と絡めて論じると面白い、かも。

 
 個人的に『ゼルダの伝説』は2D派。3Dだとプレイヤーの動き方によって死角が生じ、謎解きの構成要素に気付かないことがある。2Dならば、ギミックは全て画面中に提示される。
 トワイライトプリンセスは単なる見落としが原因で度々詰まった。その手のパターンは、自力で解決した際「なるほど、そういうことだったのか!」という快感よりも、「何でこんなことに気付かなかったんだろうな…」という自分の不注意に対する嫌気の方が大きい。「見上げる」だけで進める場面なのに悩むこと悩むこと。
 (トワプリは充分楽しめました。保身のためのフォローとかではないです)

金子:ノリとしてはレトロフューチャーっぽくやりたかったんで、プラス装備的には現代の最新装備をミックスできたら面白いなって思って。
(中略)
この辺はまだ甘いよって逆に言われるかもしれないですけど、ミリタリーオタクの人たちにも一緒に楽しんでいただけるような要素も満載です。

 金子一馬はミリオタだったのか。

石田:短い時間で達成感があるように作るのは起案時の大名目でしたね。ダンジョンを探すのが楽しいとか、集めるのが楽しいとか、合体させるのが楽しいとか。
遊んでいると小さい目標設定がポンポン出てきて、ゲームを進める動機が大きい目標設定、つまりシナリオへのモチベーションだけにならない、システム的なモチベーションが強いゲームにしたかったんです。

 「小さい目標設定」に関して、桜井政博がコラムでイースを例に出していた。レベルアップまでの必要経験値が常に画面中に表示されていて、目先のやるべきことへ自然と誘導される、という話だったような。目の前にニンジンをぶら下げられた馬の例え話を覚えている。

石田:ゲームってやっぱりテンポが大事だなって思っているんですね。
あとテンポって事で言うとプレイヤーのコントロール外の時間が一杯あるものは、やっぱり遊んでいて凄いストレスなんですね。なんで、細かい個人的なこだわりでいうと、演出関係をほぼ全部スキップできるように作ったっていうのは思い入れがありますね。
(中略)
もう何回も見たからってイライラする人もいると思うんですよね。そういうところを全部カットできるように作るのは結構大変なんですけど、カットできるように作って、もうオマエの気持ちいい時間で進められるようにしてやったぜ!っていうのはありますね。

 心強い発言。同じく桜井政博のコラムで、ゲーム制作においてプレイヤーがコントローラを操作していない時間を常に意識していると話していた。「"ゲーム"を遊ばせてくれよ」とか思いがちな人間なので、こういう考え方のディレクターはありがたい。

金子:あっヤッベー次これ出来る、っていうのがメガテンのずるいところ。
何か仲魔にしちゃうとこれが合体できるっていうのはすぐわかっちゃうから、じゃあこれが合体できるまでやろう、ってやってると、また別の悪魔を仲魔にしちゃって、今度これができんじゃん、って。で、合体したらしたでこれで何できるのかな、わっこれできるじゃん、またやろうみたいな。

 あるあるあるある。合体に熱中してるとレベルも上がるけど、ごり押しの通じないボスが用意されてるようなので安心して苦戦できそう。

 10月3日に開催された体験会でのディスカッション。
 コアなファンが集まる体験会なだけに、気になる所を突いてくれる質問が多い。

金子:背中を押すという意味では、大人ポケモンです。ポケモンの後にはぜひ。と、任天堂のインタビューでコメントをしたらカットになりました。

 笑った。カットされたインタビューはこちら(→)。

石田:絶妙さがウリだったりするので、ひとつの提案だと思って遊んでもらえたらと思います。考えることって楽しいと思いますし、苦労することも楽しいと思います。今作には、苦しいところが沢山ありますが、トータルでは楽しいところがもっとあるゲームです。
(中略)
新しいシリーズということで、この作品からはじめてください。

 石田栄司は本当に良いことを言う。今後もディレクターを務める作品があればチェックしていきたい。