『Fellows!』Vol.3(2009 FEBRUARY)雑感

Fellows! 2009-FEBRUARY volume 3 (BEAM COMIX)

Fellows! 2009-FEBRUARY volume 3 (BEAM COMIX)

 ※以下、作品の内容に言及しています。ネタバレ注意。



 新作かと思いきや『機動旅団八福神』の後日談でちょっとがっかり。そういうことならビーム本誌でやってほしかった。p11の上半分のコマ割りが良い。

(p11)
 大ゴマで全景を見せつつ、中心の小さいコマに注目させて時間の経過も表現できている。

 休憩所の男は会社の後輩だったのか。しかし何故このタイミングで家に…。無断欠勤から2週間もしないと動かないものかなぁ。というか「やり直そう」なんて手紙を出しておきながら仕事を放り出している親父の意図は何なんだ。たくましく、おしゃれな料理をさらりと用意できる清さんの好感度アップ。

 標的が獲物を狩る瞬間の隙を狙う…。『HUNTER×HUNTER』を連想せずにはいられない。間白をベタで塗るのは一般的に回想シーンだけど、今作では夜の場面を強調するのに使っている。セオリーを破ると混乱を招くリスクはあるが、ベタのシーンへの導入がうまいこと、冒頭で回想シーンにベタを用いないと明示していることの2点のおかげで自然に読むことができる。

  • 百名哲『演劇部5分前』第1話

 ビーム出身作家の中で注目している1人(他には宮田紘次など)。猫の読み切りが懐かしい。
 まさか甘いモノじゃなくて花火でくるとは思わなかった。してやられた。少々シリアスな箇所でもキャラがデフォルメされていることがあるのが気になった(p137の1コマ目とか)。もっとメリハリを活かしてもらった方が。

 母さん、やりたい放題だなぁ。「もう帰れよ」が別れの言葉になってしまった陣が哀しい。p173のコマ割りが秀逸。

(p173)
 2コマ目で表情を見せてからの、カメラをぐっと引いて寂しさが表れている3コマ目(左上への断ち切りによる開放感もポイントか)。4、5コマ目で部分部分を見せつつ縦、横方向へ圧縮して、6コマ目の泣き顔アップで開放。

 「つむじ」の2本は面白かったけど、基本的な芸風(?)は合わないと感じた。

  • 佐々木一浩『電人ボルタ』第3話

 三島商店の面々にはボルタのことは知られてるのか。素恵が果たさなければならない義理、ボルタの両親との約束とは一体…。それはともかく、p287の金次郎があまりに思い詰めた表情で笑ってしまった。

 戦術教官又吉の熱意に大笑い。後半の逆転の流れ、さらに〆も勢いがあって良し。

 まさか木静謙二を呼んでくるとは。活き活きとした姫の表情、銃の試射など迫力のあるカット、さらに濃密な内容に大満足。異国語を吹き出し内白黒反転で表すのは珍しい気がする。

 以前の読み切りの作風から、何となく非情な展開を想像しながら読み進めていた。芝居が通用しなかったシーンでの緊張感、関所代官の冷徹ぶりが良い。隔月刊誌で隔号連載は間が開きすぎだとも思うけど、長いエピソードを1回で見せたいなら仕方がないかな。