Wii『428 〜封鎖された渋谷で〜』はもっと広い層にプレイされても良いはず

428 ~封鎖された渋谷で~(特典無し) - Wii

428 ~封鎖された渋谷で~(特典無し) - Wii

 画面に表示された文章を読み進めていき、途中の選択肢によってその後の展開が変化する「サウンドノベル」というジャンルのゲーム。今作は主役が5人いて、自分の選択肢が他人に影響を及ぼす場合もあるのが特徴。例えば、人物XのシナリオでAとBのどちらを選んでもXに大した変化はないが、Aを選ぶと人物Yがバッドエンドになってしまうことがある。直接的、間接的な関係を発見し、XがBを選択するとYが先に進めるようになる。
 主人公は不良グループの元リーダー、先輩に憧れる若い刑事、製薬会社の研究主任、熱血フリーライター、着ぐるみ姿のアルバイト。誘拐事件を主軸に、それぞれの物語が絡み合いながら展開していく。同時間帯の全員のシナリオを読み終えると、次の時間帯に進めるようになる。
 選択肢による変化と、音楽や効果音による臨場感。小説とも映画とも違う、独自のエンターテイメントとして成立している作品。冒頭に丁寧なチュートリアルを用意していたり、時間帯の区切りにプレイ意欲を掻き立てる予告編風の映像を挟んだりと、普段ゲームをプレイしない人でも取っ付きやすい作りになっている。1人プレイでテクニックも不要という点で万人向け。2008年発売のゲームで最もオススメしたい作品(もちろんシナリオの好みの問題はあるので、絶対に面白いからやってみろとまでは言えませんが…)。
 全体的に味のある脇役が多くて大満足。人名や用語などの注釈文を読める「TIP」が、小ネタが仕込んであったりして好き。Wiiリモコンで片手でプレイできるのは思っていた以上に快適。単体のシナリオでは主任の大沢編が気に入っている(画に凝っているのもポイントが高い)。
 ボリュームが少ないという感想をしばしば目にするが、展開の勢いを考えるとクリアまでだれずに進めるこの程度(20時間前後?)で丁度良いと思う。クリア後のおまけという意味では、物足りないと感じるのも判らないではない(色々と用意はされているのだけれども)。
 似たシステムの『街』(1998年にセガサターンで発売。1999年にPSへ、2006年にPSPへ移植)と比較されがちである。自分にとって『街』は心に残る名作だが、難点もそれなりにあり減点方式で考えるなら広くオススメはできない。反面『428』は広い層に受け入れられることを意識した上で制作されていると思われる。『428』を『街』の続編として見ると不満かもしれないが、後継作として見れば満足のいく出来ではないかと。何はともあれ、『街』のコンセプトを受け継いだ作品を送り出してくれたことに感謝したい。