『クロニクル』感想


クロニクル [Blu-ray]

 ジョシュ・トランク監督。2012年アメリカ公開。

 日本での封切り直後にTwitterで気になる感想が散見され、観に行ってみようかと思ったが「首都圏限定・2週間のみ公開」により一旦はスルー。その後、好評により全国拡大・期間延長となりチャンスを得た。


 家庭に問題を抱え、高校でもパッとしない生活を送るアンドリューが超能力を会得。それをきっかけに、距離のあったいとこのマットや学校の人気者スティーブと親密になり、3人で充実した時間を共有する日々が続くが……。


 超能力は、手を触れずに物体を動かすテレキネシス。シンプルだ。この力を試してみる過程がすごく楽しそう。高校生の集団らしい悪ノリ感も大きい。孤独をやりすごしていた毎日がイベントに参加するような環境に移り変わっていく様子からは、アメリカの若者のリアルがうかがえる。明るい面だけでなく、母親が病気で薬代が要るのに傷害保険で酒を飲み働かない父親、みたいな暗い部分も生々しさのエッセンスだ。力によって深刻な事態が起こってしまうが、あくまで超能力は一種の象徴であって、思春期の普遍的な苦さが描かれている。


 タイトルの『Chronicle』は「年代記」と訳されることが多いようだが、「出来事の連なりを記録する」という意味がある。
 アンドリューは自分の生活を全てビデオカメラで撮影し始めた。この映画はその記録で、撮影された映像だけで出来上がっている。普通なら、鏡越しでないと本人の姿が見えないとか、3人で話しているのに画面には2人までしか入らないとか制限が出てくる。でも、テレキネシスがあるわけですよ。カメラを空中に浮かべられるため、むしろアングルの自由度は高い。とはいえ「カメラが存在しないシーンはない」というルールは絶対で、だからこそ「なるほどその突破口ならこの画が撮れる!」とアイデアを面白がっていた。



 「疑似ドキュメンタリってフィクションである事を開き直ったほうがかえって迫真的」という指摘は興味深い。『トロール・ハンター』はレンタルするリストの底の方に沈んだままだな……。デ・パルマの『キャリー』も未見。いずれ必ず。