中村佑介が語るイラストレーターの仕事観 物を売ることと価値
アジアンカンフージェネレーションのジャケットや『謎解きはディナーのあとで』の表紙イラストで有名な中村佑介がネットラジオ「青春あるでひど」にゲスト出演した。イラストレーターという職業に対する考え方を語っている。
まずイラストレーターとはアーティストではない。個性なんか要らない。むしろ対極に位置する、デザイナーと似た職業である。クライアントの依頼に応じて、商品の魅力をよりよく伝えて広く売るのが仕事だと話していた。
翻訳家に近いかもしれない、という説明はなるほどと思った。音楽や小説を、絵の形に翻案してアピールする。
「商品を売る」話題から、後編では価値についての意見が交わされる。アナログと圧縮データとの情報量の差から生じる体験の質や、ビックリマンがヒットした理由など。
自分がアジカンのCDを買うようになった理由のメインは中村佑介のイラストなので絵に描いたような客なのだけど、それはさておいても、敬意を払うべきテーマだ。
「最近で良かったイラストは?」という質問に氏は『ファイアーエムブレム 覚醒』(コザキユースケ)と即答した。理由は、シリーズを初めてプレイしてエンディングまで遊んだから。どれだけ素晴らしい作品であろうと体験してもらわなければスタートラインにすら立てないわけで、興味を持たせるフックは必要だ。そしてシミュレーションRPGというジャンルはキャラクター育成と相性が良い。
似た事例で個人的には、「艦これ」の島風のキャラデザがあまりにもキャッチーで感動した。あの要素のまとめ方はすごい(ただ実際にプレイを始めたのはWizardryとの共通点を指摘する意見を読んでのこと)。
近頃は同人ボードゲームが盛り上がりを見せていて。つまりは自主制作なのだけど、有名ショップのランキング上位をキープしていたり、海外メーカーから翻訳されてリリースされたりする作品もある。多くはアマチュアの手によるもので見た目がピンキリなせいか、時折2chで「あれが売れているのはアートワークのおかげで……」みたいな文句が目に入る。手に取ってもらうためにデザインに注力する(相応のコストをかける)ことを軽視しているなと感じる。
誤解してもらいたくないのだが、販売数や売上はあくまで指標のひとつであって、作品それ自体の評価とは分けて考えるべき。とはいえ、関係者やファンの幸せのためには大事な尺度でもある。売れてないから単行本の続きは出ません、次回作はありません、というのは心苦しい。
さらに理想を言えば闇雲に売れさえすればいいということでもない。「マッチング」がキーワードだ。趣味嗜好は人それぞれで、合う合わないは個人の問題になってくる。歴史に残る名作だからといってあなたも気に入るとは限らないし、レビューが星ひとつでもあなたはハマるかもしれない。好みそうな人に届くかどうかが肝心で、その一助となるのが優れたデザインなのだろう。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
中村佑介が石黒正数と親交があると知ったときはすごく意外に思った。大学時代は密かにライバル視しあうような関係だったとか。『季刊エス』vol.32(2010年10月号)のシゴトバ探訪のコーナーでふたりの会話の様子が判る。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
イラストは単体でそのままパッケージになるのではなく他のデザイナーによる仕事(タイトルロゴとか印刷する紙の種類とか)を経て完成する。『MdN』11月号の特集がまさに「それはイラストの力か? デザインの力か? イラストのディレクション」で、雑誌表紙の制作過程が紹介されている。ちなみにイラストレーター赤りんごはデザイナーとしても活動中。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
「青春あるでひど」は科学をテーマにしたネットラジオで、しゃべりが気に入っていることもあり何年も前から毎回チェックしている。ここしばらくはゲストを迎えてのトークが主で、マンガ編集者や性転換経験者などから幅広く興味深い話を訊いている。