本気の勝負に挑むことで見えてくるものはあるのか? 『劇場版テレクラキャノンボール2013』感想

 テレクラキャノンボールとは! ナンパ・テレクラ・出会い系を駆使して女とハメるまでのスピードを争う競技である。


 ジャンルこそAVだがこれは本番シーンありの映像を流通させるための分類であって、全体の構成はバラエティ番組に近い。とはいえ18禁の話題なので注意。

レギュレーションについて

 5日間に渡るレースの模様を10時間の長尺で描く……のはDVD版で、劇場版ではラスト2日の戦いに焦点を絞って編集してある(マジにキャノンボールな自動車・バイクによるレースパートもあったりする)。
 勝つために必要なものは何か。
 まずはスピード。セックス&撮影の交渉が成立した着順に応じてポイントが加算される。スタート直後はナンパのみ、時間経過でテレクラ等の「よりハメやすい」手段が解禁になっていく。
 そしてプレイの内容に対してボーナスポイントが用意されている。「10代」「ごっくん」などが加点のチャンスだが、「40代以上」「顔出しNG」などは減点の対象になるため、相手が決まってからも油断はできない。
 出場者はAV監督6名。業界の予備知識はさっぱり(バクシーシ山下カンパニー松尾の名前だけは知っている程度)だが、キャラが立っていてすんなり入っていけた。中でもビーバップみのるはアフロ・前回優勝者・光る雑学ナンパテクニック・無免許と抜きん出ている。

人のセックスを笑う。(大勢で)

 3月25日にオーディトリウム渋谷で観た際は超満員の大盛況だった(補助席として追加のイスが用意されるほど)。そんな大人数でのAV観賞が既におかしいのだけれど、どっかんどっかんウケるの何の。企画説明みたいなバラエティ色の強いパートはもちろん、外見がハードモードな女性の登場だとか自分ひとりで観ていたらテンション落ち込むこと必至なシーンでも周囲の盛り上がりのおかげで明るく笑い飛ばせた。


 伊集院光のラジオでたまに読まれる、性にまつわる投稿(エロ本を買って帰った時にトラブルに巻き込まれ……)(脱衣ゲームに白熱するあまり友情に亀裂が……)がすごく好きで。馬鹿馬鹿しくて物悲しい、個人的なようで普遍的な、人間の滑稽さがエロエピソードには表れているように思う。
 ただそれはあくまで相手のいない男連中の話、ある種のワクの中での「おもしろ」だ。でもテレクラキャノンボールは「男女のセックスもまた、笑える」と、壁を越える体験を与えてくれる。重ね重ね言うが、映画館の雰囲気による後押しも大きい。

経験による対話の洗練

 えー、「オナニーは体調管理、セックスはコミュニケーション」なんてことを申しまして。
 劇中では本番が終わったあとで女性が、まあ身の上話と言いますか、自分のエピソードを語ってくれることがあるんですね。でも日頃からテレクラだとかで見知らぬ男性とのセックスを求める方々ですから、ちょいと普通じゃあない。しかもカメラが回っているところでしゃべるわけで。
 コミュニケーションはときに「型」が浮き彫りになりますが――たとえば営業トークとか――メインの交流たるセックスを経てからの会話にも、不特定多数の相手を通り過ぎたが故の「様式」があるのかもしれないな、と思いましたね。
 もちろん、各男優が「ついしゃべらせてしまう力」に長けているのだろうという想像もありつつ。映画監督ってのはねえ、人間を撮ってるんですよ(急に何?)。

勝負って何だ

 テレクラキャノンボールは、レースである。全員でスコアを競い、頂点を決めることに意義がある。
 ただし。当たり前だが国際的なレギュレーションがあるわけでも何でもなく、制作陣で決めたルールの上での、それも相対的な順位の問題だ。トップを取ったからどうなるというのか。
 テレクラキャノンボールは、真剣勝負だった。出場者が和気藹々とひしている合間合間、本気が伝わってくるシーンで手に汗を握った(どれだけ勝負が重要かというと、上映前に制作会社の方が挨拶に出てきて、レースの結果についてネタバレはしないで下さいとわざわざ忠告があったくらいで)。


 本作を観に行こうと決めた理由はひとつ。大喜利イベント「オフ喜利」主催・プロレス誌『KAMINOGE』編集者である松本さんの熱烈な感想に動かされた。自らの信じる面白い何かに全力で取り組もうとしている人には、また違った風景が見えているのかもしれない。



KAMINOGE vol.30―世の中とプロレスするひろば 前田日明の異常な愛情

今後の上映予定

 7月以降も沖縄・京都・青森で上映が予定されている。


 詳細はハマジム公式サイトをチェック。

                            • -