DS『極限脱出 9時間9人9の扉』クリア後の感想
- 出版社/メーカー: スパイク
- 発売日: 2009/12/10
- メディア: Video Game
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画面タッチで怪しい場所を調べてアイテムを入手、利用して部屋からの脱出を目指す「脱出パート」と、サウンドノベルのように選択肢で展開が変化する「ノベルパート」で構成されるアドベンチャーゲーム。公式サイトで体験版がプレイ可能。また、DSステーションで配信もされている。
『Ever17』が代表作とされる打越鋼太郎がシナリオとディレクションを担当。チュンソフト開発、スパイク販売。
プレイ時間は20時間弱。謎解きにはさして詰まらなかったが、選択肢分岐を誤り無為に周回を重ねて(既に見たエンディングを3度経験)この程度。
期待していたトリックについては確かに驚かされた。プレイヤーが介入できるゲームのインタラクティブ性を活かしているし、伏線というか前フリも効いている。ただ、こういうことを言い出しても建設的でないのは承知の上だが、似た要素のある推理小説やゲームを経験していたため、自分にとっての意外性はそこまで大きくはなかった。
クライマックスの謎解きに入る際の演出は素晴らしかった。全力で賞賛したい。今作をプレイした最大の価値はあそこだったな、と断言できる。
ノベルパート、及び謎解き中の会話について。
『CUBE』、『SAW』のような、いわゆるソリッドシチュエーションスリラーに近い状況だが、緊張感があまりない。部屋を進む際のとあるルールも原因のひとつだが、部屋を調べる過程に仕込まれているネタ会話のゆるさが大きい。仕込まれたメッセージを探すのが楽しかったので良かったと思っているが、「文章がギャルゲーっぽい」と抵抗感を抱く人もいるようだ。
脱出パートについて。
謎解きの難易度は高くない。理不尽なものはないし、詰まっていると同行者からヒントがもらえる。逆にヒントが出るのが早すぎると感じる箇所がしばしばあった。
周回を重ねる都合上、同じ謎解きを再度プレイすることになるが、これをスキップできないのが難点。シナリオ上の意味がない訳ではないので飛ばせなくてもいいのだけれど、2周目以降はさくさく進める配慮がもう少し欲しかった。パズルの解答となる数字が出口の暗証番号というケースが多いので、いきなり入力して突破可能とか(フラグ立てが必要で、まずは手掛かりを探そうなどと言われる)。
また、最後のパズルが結構な知名度を誇るもので、ラストを飾るのがこれかよ、と思ってしまった(状況に適した出題ではあるのだけれど、率直な感想として)。
しばしば考える、ゲーム故の演出の難しさを改めて感じた。ラストに最も難しい障害を配置するのは当たり前だが、何度も詰まるほど厄介だとクライマックスに向けて盛り上げてきた流れを断ち切ってしまう。そういう意味では、リトライ上等のサガシリーズでよくある「お前誰?」的な唐突なラスボスにはメリットがあるな、と。
システム面について。
セーブデータがひとつしかないのが不満。周回の手間が大きいので切実な問題。自分はそうは思わなかったが、ギャラリーモードが欲しいという意見をちらほら目にする。サウンドノベルとビジュアルノベルの、単なる名義ではない明確な差異が発見できた。
西村キヌによるキャラクターデザインは気に入っている。立ち絵が割と動いていて良かった。
まとめ。何か突き抜けた所を持つ作品が好きなので、個人的にはかなり面白かった。シナリオに意外性を求める人ならプレイしてみても良いのでは。もちろんディレクターのファンならやって損なし。
小説版(上下巻)が講談社BOXで刊行予定。執筆するのは黒田研二(メフィスト賞受賞者。マンガ版『逆転裁判』の脚本担当)。本作は「ゲームであること」を活かした点に大きな魅力があるため、活字媒体で読んで面白いのか不安ではある。
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打越鋼太郎はチュンソフトに所属しているため、今後も新作サウンドノベルはこの方向性になるんだろうか。『かまいたちの夜』初代のような、本編以外に遊びが豊富に盛り込まれている作品が好きな身としては複雑な心境。
とりあえずは、イシイジロウ(本作のプロデューサー。428の総監督)が奇抜なアイデアを暖めているようなので、そちらの新作に期待しておこう。