それでもボクはやってない

 月並みな感想だけど、やっていないことの証明を求めるのが間違いだってことかな。公判のシーンでは役者の一言半句に注意を払い集中していたせいか、2時間半弱でも全く長いと感じさせなかった。一連の流れの中で調書や保釈金等の情報を無理なく提示しているのは良いけれど、隣りの中年女性二人組が時折「あらまあ」「そりゃあないわよ」などとひそひそ話していたのが少し気に触った。クライマックスでの主人公の独白が印象深い。
 刑事の言い分によると「下着の上から触ったら迷惑防止条例違反、下着の中に手を入れたら強制猥褻」に当たり、「前者なら5万円程度の示談で解決すれば家族にも知られずに済む」らしい。ということは、「軽微な痴漢行為に及ぶリスクは逮捕された場合に支払う5万円だけ」と解釈しても間違いではないのかな。女性から「被害者の気持ちなんて分からないだろう」とか言われるとぐうの音も出ないので、痴漢冤罪問題は語りにくいなぁと思う。
 差入れに持って行った文庫本の栞に使う紐を警官が引きちぎった時は、はらわたが煮え繰り返る思いだった。