『ジャンゴ 繋がれざる者』感想

 クエンティン・タランティーノ監督。2013年3月1日より国内公開。


 心待ちにしていたタランティーノの新作。大満足だった。


 南北戦争の前後、まだアメリカ南部では黒人が虐げられている時代。奴隷のジャンゴがドイツ人の賞金稼ぎとタッグを組み、愛する人を取り戻すために戦う。


 クリストフ・ヴァルツが演じるDr.シュルツがとても良いキャラクターだった。
 賞金稼ぎというとマンガのイメージが強いのだけれども、実際に文明社会で活動するとどうなるのかというエミュレートに納得のいくものがあった。普通に生活しているところで町の住民を白昼堂々拳銃で撃ち殺すヤツがいたら、あまりにも危険人物だしそもそも殺人事件だ。騒然となる。そこで、私はこれこれの法律に則って業務を遂行したのですよ、と「Dead or Alive」の罪状もセットで解説、事なきを得る。ルールに基づいて行動しているのだから何も問題はない、と言わんばかりに自信満々な様子がドイツ人の設定にマッチしている。
 Dr.シュルツがドイツ人であることは、ジャンゴと行動を共にする理由としても重要だ。黒人の奴隷制に反対する彼だからこそ、命令するのではなく、条件を提示して相棒として一緒に仕事をする。ジャンゴの目的に積極的に協力するきっかけとしてジークフリートの逸話が絡んでくるのだけれど、随所で教養を感じさせるのも好感が持てる。
 (本作のキーワードは「文化」だと考えていて、伝承の意味付けは大きなポイント)
 教養といえば、シュルツが英語とドイツ語だけでなくフランス語を披露するシーンがあって、そこでようやく俳優がクリストフ・ヴァルツだと気が付いた。氏は『イングロリアス・バスターズ』ではハンス・ランダ大佐を演じており、そちらでも英独仏語を流暢に使い分けている。


(以下、ネタバレ注意)

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